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度重なるご縁とタイミングで導かれた「名張」


古民家カフェ このは

時間を積み重ねてきた古民家が持つ木造のおもむき、存在感のある梁の風合い、縁側のガラス戸から一望できる自然の景色。名張市錦生に古民家を改装した「古民家カフェ このは」が2017年1月9日にオープンした。営むのは大阪から若者移住定住チャレンジ支援事業で移住した内本 良さん、紅里子さん夫妻。
かつての住人が去った後、そのままでは傷んでいく一方だった民家を引き継ぎ、自分たちの手でふたたび生活の風を吹き込んだ。
ご夫婦はなぜ名張に移住を決めたのか。

 

 

「このは」を動かす二人の多様な経験

「移住先に名張というのは最初は考えてなかったんですよね。」と良さんは当時を振り返る。
調理師学校を卒業後、大阪の飲食会社へ就職。イタリアンの店舗で8年間勤め、やがて移動販売を始めたいと思い独立した。その時、系列店に勤めていた奥様(紅里子さん)に仕事の手伝いを頼んだことがきっかけで、二人三脚の運営が始まる。
大阪では移動販売とテイクアウト専門のお弁当屋さんとしてスタートをした。かつての職場はイタリア料理店であったものの、料理長さんはフレンチ出身・先輩は日本料理出身。ジャンルを越えたシェフに囲まれていた影響もあり、良さんの料理へのアプローチは多岐にわたる。
ただ、お弁当に入れる“きんぴらごぼう”や“おひたし”などの副菜づくりには携わったことがなかったため、料理好きだった良さんのお母さんから家庭料理の作り方を教わった。パティシエであるお姉さんには焼菓子を作ってもらい、紅里子さんはパン屋で製造していた経験からベーグル・ピザ生地を担当。家族でそれぞれの得意分野を活かし作り上げていくスタイルは、現在の「このは」のメニューにも反映されている。

 

古民家カフェ このは

 

名張、そして古民家との出会い

開業を実現した先に、ぼんやりと「古民家を改装したカフェをしたい」という新たな夢が生まれた。
大阪を拠点としていたため、初めは大阪に隣接した県しか頭になかったという良さん。大阪、奈良、和歌山・・・買う寸前までいった物件とは歯車が噛み合わず思うように前には進まなかった。
そんな折、紅里子さんは大学生時代、実家のある尾鷲市から大阪の下宿先まで近鉄電車で里帰りした時のことを思い出していた。あの時何度も通り過ぎた名張。景観の良さや利便性を実感していて密かに好印象を抱いていたこともあり、良さんに「一回、名張どんなとこか見にいかへん?」と勧めてみたが、良さんはまず「名張」という地の存在を知らなかった。どこにあるのかも。
「ほな、ちょっと行ってみよか。」と試しに足を運んだ時がちょうど秋、自然の豊かさに魅了されたという。
「確かに…名張って大阪からこんなに近いんや!」そこから名張を視野に入れた古民家探しが始まった。
インターネットの不動産サイトでたまたま見つけた小さな情報を糸口にしてたどっていくと、偶然が重なり吸い寄せられるように話は進み、2014年4月に物件を購入することになった。

 

古民家カフェ このは

 

新たに作り上げていく家、人とのつながり

とはいえ、まだ大阪で店を経営していたため、改装と言っても週に1回の定休日毎に名張へ通って手入れをしていく生活。
初めの頃は1日かけて庭の草引きをし、1週間後に再び訪れるとまた草が生い茂っているという状態で、まったく次の作業が進まなかったという。
それでもちょっとづつちょっとづつ「じゃあ今日は屋根をここからここまで貼ろか。」「今日はこの部屋だけ床貼っていこか。」自分たちができる所は自分たちで修理をし、手直しを加えていった。離れを潰して建具を再利用、余った壁材を譲ってもらってやりくりし、プロの手が必要な箇所は、移動販売の時に知り合った建築士さん、大工さん、左官屋さんといった方々へ依頼。人の繋がりが広まり、やがて形になっていった。
約3年という月日をかけて改装していき、2016年6月、大阪の店は閉め、完全に名張へ移住。
時間はかかったものの、少しづつ馴染んでいった新たな土地。
不安を抱きつつもいざ飛び込んでみると、錦生の皆さんは親切で温かかった。
出迎えてくださった方々の期待に応えるように、地域の草刈りがあれば「オレ行きまっすわ!」と積極的に参加する良さん。二人が地域に溶け込もうとする姿勢が更に近隣の人々との交流を深めていった。錦生産のキノコを使ったメニューも喜ばれている。

 

古民家カフェ このは

 

来てくださる人への想い

「このは」に上がるとすぐに、可愛いらしい木のおもちゃが並ぶキッズスペースがある。
キッズスペースと授乳室の設備は古民家を見つける前から頭にあったという。
きっかけはカフェめぐりが好きなお姉さんの存在。育児真っ盛りのお姉さん親子を目の当たりにし、小さいお子さん連れでも安心して来られるような、お母さん目線に立ったキッズスペースの確保は必須だったという。ゆっくりと落ち着ける授乳室も設け、座卓設置の意見も取り入れた。親子のみならず、おじいちゃんおばあちゃんとも楽しめるメニュー構成にも配慮が感じられる。
くつろいでもらえるようにと細部にまで行き届いた親切さは、訪れる者にとって心地よい。

 

古民家カフェ このは

 

「ほんまに、周りに恵まれてます。」

さまざまな人の力添えによって現在に至る内本さん夫妻。
今まで培ってきたたくさんの出会いと経験が力となり、ゆっくりでも自分たちのペースで着実に前進を続けるお二人の、パワフルなチャレンジ精神と行動力は人を引き付ける。
出会いを大切にするご夫婦が見出した名張の古民家への移住生活。
新天地で夢を実現し、更なる夢の実現にむけて一歩一歩あゆんでいる。
今後もイベントやアウトドアウェディングなどでの移動販売は継続しつつ、地域に根をはった親しまれる店を目指す。

 

 

【移動販売のお知らせ】

5月3日(祝)森のはるかぜマルシェに出店(肉まきおにぎり・創作丼)
店舗とはひとあじ違う、「移動販売 このは」をお楽しみください。

古民家カフェ このは

information

古民家cafe このは
〒518-0736 三重県名張市井手344
電話番号:0595-41-2322
https://www.facebook.com/konoha508/

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