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こだわりを生み出すアーティスト


お洒落な風貌、少しぶっきらぼうな受け答え。田上堅一さん(40歳)には、農家というよりも芸術家(アーティスト)という言葉がよく似合う。インタビュー中、田上さんはなかなか目を合わそうとしてくれない。時々、はにかむような笑顔と手を頬にあてる姿、その瞳の奥に芯の強さを感じる。

こだわりと
徹底管理
10年余り務めた農協職員を脱サラした後、平成21年に独立。名張駅近くの住宅地と、蔵持町にビニールハウスを構え、6種類のイチゴを栽培している。
田上さんのこだわりは生産から出荷まで一貫している。土づくり、間引き、出荷のためにイチゴを摘む作業時には絶対にイチゴ本体を持たないことを徹底的に周知する。「だって、考えてみてくださいよ。イチゴ狩りもそうですけど、人がいっぱい触りまくったイチゴって食べるのってちょっと嫌じゃないですか?」まさに芸術家だ。
さらにそのこだわりは続く。

商品パッケージは2種類。お持ち帰り用にはナチュラルなもの。贈答・発送用には、黒を基調としたシックな箱に一粒ずつが鎮座している。両方の箱に共通してイチゴは2段積みにはしない。芸術作品をさらに引き立てるため、勝手なイメージをさせないためにパッケージはロゴのみがプリントされている。
イチゴの花が一輪置かれているのも粋な計らいだ。

農家の力に
なりたい
農業に決して似つかわしくない田上さんが農家になるきっかけは、それまで関わってきた「農家の力になりたい」という思いだった。
農協職員時代に葛藤し続けたこともある。農業をするための土地も資金もなかったが、全国で活躍するカリスマ専業農家の姿が、田上さんの背中を押した。「農業はやり方次第」と自ら道を開く覚悟を決めた。

おいしさと
ブランドを
発信したい
田上さんは「百貨店に並ぶような作品を作りたいんです。美味しいイチゴは普通。名張から発信できる作品を作り続けることで、名張にはこんなにおいしいイチゴを作るところがある、地域そのもののブランド力が上がっていけば、農業全体の活性化にもなるのではないかと思う。」と話す。

風農園は昨年冬、20年に一度の大雪でビニールハウスが倒壊するという大被害を受けた。だが、立ち止まってはいられない。
「できるところから作品づくりを続けたい。」そう話す田上さんの目は、希望に満ち溢れていた。

information

風農園
代表取締役 田上堅一
〒518-0704 三重県名張市鴻之台4-48
TEL:080-5158-3576
URL:http://www.kaze-nouen.co.jp/

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