
農女子、有機パプリカに挑戦!

「こんなに青い状態で収穫するんですね。」赤に色づき始めた大きなトマトを手に「まだまだ青い状態で収穫して、これを宅配サービスのところへ送って、お客様の手元に届くころには赤くなるように、ちゃんと調整して届けてくれるんですよ。」と笑顔で答えてくれたのは鯨岡恵さん(32歳)、今どきの農業女子だ。夏の2か月間で大玉トマトを4トン、この地域では珍しいパプリカ、冬は小松菜・ほうれん草・水菜などの葉物野菜を出荷している。
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震災があって
ここに縁ができた。 -
福島県いわき市出身の彼女は、東日本大震災が起こった時には、地元の農業法人に勤務していた。自宅も勤務先も幸い避難区域には入らなかったが、農業法人が所有していた田畑が原発30㎞圏内だったため出荷停止に。農業法人そのものの業務が立ち行かなくなり、解散してしまった。最初は1年くらいどこか避難して、研修しながら農業をできればいいなと考えていた彼女。東京で行われた農業人フェア。大学生の時は名古屋で過ごしたこともあり、友人も多い。どうせなら、土地勘のある近隣県がいいと、愛知県、静岡県のブースを経て運命的に導かれるように三重県のブースで足を止めた。就農者へのバックアップ体制はとても厚い。さらに、彼女は三重県の担当者に自分のやりたいことをぶつけてみた。「有機(野菜)、施設園芸、大玉トマトを作っている方のところで研修したい。」と。そこで合致したのが福廣農園の福廣さんだった。
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海外への夢と
地域への恩返し -
その後彼女は、福廣さんにコンタクトをとった。福島県会津で、ミニトマトを作っていた経験はある。しかし、大玉のトマトを作るのは難しい。まずはその作り方を知りたかった。連絡をしたときに「一度見学においで」と何とも気さくに受け入れてくれた福廣さん。まずはどんな環境なのかも含めて秘密を探りにやってきて驚いた。農場はきれいだし、環境も気に入った。近くにコンビニもある!会津では、熊除けの鈴をつけていたが、子熊に遭遇したこともあるそうだ。そして彼女が知りたい「大玉トマトの作り方」まで知ることができる。彼女はすぐにここでの研修を決心した。
元々環境問題の研究をしたくて、大学は農学部を専攻し、環境問題や農業の重要性を痛感した。彼女の夢は、「海外で環境問題の研究をしたい」という風に変化していった。当然彼女の家族は反対したが、「環境問題は無理でも、農業をやりたい」という夢は認めてくれた。祖父が兼業農家だったため、農業の大変さを知るが故の反対。しかし、彼女の熱意に押し切られた格好だろう。
特に力を入れている「パプリカ」。名張では彼女が唯一の生産農家かもしれない。
スーパーで目にするものの多くは、韓国産で、水耕栽培で生産されている。彼女は有機栽培でパプリカを栽培しているのだ。オランダや韓国のパプリカとは品種の違う、有機で栽培しやすい、病気などに強い品種を選び栽培しているが、その労力はあまりにも違いすぎる。おまけに国産ともなれば必然的にコストもあがり、「パプリカはあまり儲からない」といわれるそうだ。それでも彼女はパプリカを作り続ける。パプリカは、重さが軽いので収穫などの時には女性でも扱いやすく、女性には嬉しい作物。それでいて単価も高いし、生産している人が少ない。トマトやほかの野菜もやるけれど、農家として独自色を出していきたいと彼女は言い切る。「あまり日が当たりすぎるとそこから腐ってきてしまう」ことや「パプリカは9割くらい赤くしてから収穫する」こと、パプリカの話を語り出したら止まらない。
「原発難民となった私を受け入れてくれた名張市。その名張市に少しでも恩返しをしたい。環境問題にも優しい有機農業の普及にも力を入れたいし、もっと女性の農家が増えるような「ガールズ農場」もやってみたい。」夢はどんどん膨らむ。彼女の生産したパプリカに触れてみた。平均100グラムほどのパプリカは、スーパーで並んでいるそれよりも重量感がある。彼女の想いが詰まっている分、さらに重みを感じたのかもしれない。しっかりと先を見つめる彼女の横顔に、これからの農業を担う、生産者としての顔がそこにあった。
information
鯨岡農園
代表 鯨岡恵
〒518-0606 三重県名張市薦生405(福廣農園内)
TEL:090-8612-3507
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