nanowa びと

ナバリbochibochiメグリ #2


 

これまでもしばしばインタビューや広告記事を書いている、nanowaライターのナカミツです。

名張に移住して今年で10年目。

つい2~3年前までは どっぷりと育児に専念していました。

振り返れば、子供との生活空間より外に出ることは、殆どといっていいほど無かったように思います。そして気が付けば、名張の歴史もお店も、人もお酒も祭りも、依然知らないことだらけ。

そんな私ですが、知らないという事に怖めず臆せず、知りたいがゆえの立場で、いま初めて出会う<人・物・場所>について、興味の赴くままにお話しを聞きに行き綴るインタビューコラムをお届けしていけたらと思います。

 

※コンセプトとしては、つまり、前回の「キモノ女子会」の記事が“第1回目”だったのです(^▽^;)

 

 

桔梗が丘【閑日堂】

 

今回私が伺ったお店は、桔梗が丘にある 古美術・閑日堂 さんです。

 

看板は目にしていたし、お店の名前も知っていました。はて、骨董店とはどんなところなのでしょう?

『希少価値の高い壺・皿を取り扱っていて、気軽に出入りできない店』

正直そんなイメージです。

何かどこかのタイミングで、と訪問するキッカケをうかがっていたところ、

前回取材させてもらった【着物着付け教室つむじ】のうっちゃん先生のご紹介でインタビューの機会を得たという経緯です。

 

 

 

周りの人が応援してくれた。あっという間の30年

 

閑静な住宅地の一角にある閑日堂さんは、平成元年10月に開店。

お店を構えてから、今年で30年になる老舗です。(東京商工リサーチでは創業30年以上を「老舗」と定義。)

オーナーの中森光代さんは、閑日堂を始める前は洋服のテキスタイルデザイナーとして活躍していました。

 

【どうして骨董店を?】

 

料理好きな中森さん。お料理に使用する器として骨董は最良だったとのこと。

 

「こんなええもんが、なんでこんなに安いんや・・・?!」

 

ご自身のそんな思いと、旦那様も骨董好きだったことから夫婦で競い合うように収集が始まり、どんどんエスカレートしていったといいます。

40歳の頃。お二人にお子さんがいなかったということもあり、

“もし子供がいたら”という想定で、大学へ通わせる学費(のつもり)を起業の資金にしました。

20年勤めていたデザイナー業を辞め、まったく好きから始めたお店。

古美術店をするにあたって、かつての職業とは敢えて一線を画するつもりで、布はあまり扱わないようにしようと思っていました。

ところが、開店と同時期に古布ブームの到来。

店のお客さんからは「布は置いてないのですか?」とたびたび聞かれ、

そんな要望に対して『では、これだけ置こ・・』『これだけ置いておこう・・』

としていくうちに取り扱う幅が広がり・・・

 

「日本の着物って、おもしろいな。」

 

と、和のデザインにどんどん魅せられていったといいます。

 

 

「デザイナー時代、“着物”は、仕事をする上で資料として参考にしていたけど、

まさか今の仕事の役に立つとは。いつのまにか、あっという間の30年。

前の仕事よりも今の仕事の方が長く続くとはゆめゆめ思わなかった。(笑)」

 

 

思いもよらない形で過去が現在へと繋がり、

今では数多くのアンティーク着物や小物、様々な布が揃うお店としても知られるようになりました。

 

 

 

 

 

お店についてのあれやこれ

 

閑日堂で取り扱うアンティーク着物の多くは明治・大正時代のもの。

そんな当時の日本人女性の平均身長は148cmで細身の体型。

昔の栄養事情が今ほど豊かではなかったため全体的にほっそりしていて小柄。それだけに現代人には短かったり狭かったり、お直しが必要なものが数多あります。

アンティークの物が好き!着たい!という人には、

帯の正面と後ろの柄が揃うように、見えないところに生地を継ぎ、

丈が短い着物は調整をしたり、と お店のスタッフさんが専門で仕立て直してくれます。

 

「着物ってその点ではすごく便利!今の若い人らは、洋服の延長上で楽しんでくれている。

袖が短ければそこにレースを縫ったり、中にブラウスを着たりして。

それがそれで可愛い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

骨董や着物の知識の他にも、風習や文化にも造詣が深い中森さん。

知らなかった事や疑問に思った事にも丁寧にお答えしてくれました。

 

「五節句って知ってる?」

 

恥ずかしながら知りませんでした。節句と言えば、せいぜい桃の節句と端午の節句。

五つもあったんですね。

 

・人日(じんじつ・1月7日)❀七草の節句

・上巳(じょうみ・3月3日)❀桃の節句

・端午(たんご・5月5日)❀菖蒲の節句

・七夕(しちせき・7月7日)❀笹竹の節句

・重陽(ちょうよう・9月9日)❀菊の節句

 

なかでも、重陽の節句の習わしについて少し教えてもらいました。

 

 

被せ綿(きせわた)って??

 

「被せ綿」とは、菊の花に綿をかぶせておき、翌朝、朝露を含んだ綿で体を清めると無病長寿が叶うという、平安時代の貴族の上品で風雅な習わし。

菊は晩秋の花というイメージですが、旧暦の9月9日は今の10月中旬ごろにあたるので、まさに菊の美しい時期だったようです。

 

根掘り葉掘り、図々しくお話を伺った上に、かわいいお菓子までいただきました。

 

 

 

この日は【ギャラリー閑】で、生け花教室が開かれていました。

 

講師は厚見美幸さん。

 

【游花の会】では、野に咲く花や身近な野草を使って“足元の花を大切に”という考えのもと、季節感を表現した生け花教室を、毎月第2火曜日に開催しています。

 

「生活に生の花を一輪入れて、日常に潤いを。」

 

ぱっと明るい花は勿論美しいのですが、淡い色やくすんだ色の草花も趣きがあって可憐ですねぇ

 

 

 

この日生け花として使われた花や気の数々。

 

 

 

 

 

 

お稽古の休憩中にお邪魔いたしました(^人^)♪

 

 

 

最後に、中森さんが、古美術業界の時代の流れと物の真価について話してくれました。

 

「掘り出し物って、早々見つかるものではないですよ。

世の中変わってきているなぁ・・とつくづく感じる。

高価なもの安価なもの、それぞれ、それなりの理由がある。

何を選んで買うかで、結果的に自分の人生にすべて返ってくるんですよ。」

 

骨董・着物の仕入れは、三重・大阪・奈良・京都・名古屋など各都市の専門市場で買い付け、定期的に開催している所謂“交換会”では、主に業者同士で出品と仕入れをするとのことです。(一部一般の持ち込みもあるよう。)

長く携わってきた専門家の目から見て、現在の“モノ”の流通形態は大きく変化しているといいます。

フリマアプリなどで個人売買が普及し、モニター上で直接物品のやりとりが行われる昨今。

端的に、素早く、限りなく手数料のかからない方法で物が往来するのが合理的な現代の姿。

兎角、人を介さないやりとりを選択すれば、もちろんコスパは良いでしょう。

しかしその一方で、店に足を運び人と交流することで気づく楽しみや面白みの発見も、副産物としてあるように感じます。

私も、ひょっとしたら“五節句”なんて一生知らないままだったかもしれません。

 

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■INFORMATION

桔梗が丘閑日堂
〒518-0623
三重県名張市桔梗が丘3番町4-41-96
Tel→0595-65-1361
Fax→0595-65-1578
営業時間→11:00~18:00 定休日 木曜日
http://kanjitudou.com
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